離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
「一年ぶりに会って、即離婚届なんて出せないって言われて……それで、一カ月猶予が欲しいって」
「猶予?」
「一カ月間一緒に過ごして、私の離婚の意思を変えるって、そう言われて……」
言っていなかった事情を話すと、あっ君は何故か目の前でため息をつく。
「一年もひとりにさせておいて、一カ月で取り返すって?」
吐き捨てるように言い、ハッと笑う。
「そんなこと、できるはずないだろ」
ちゃんちゃら可笑しい。そんな調子で笑うあっ君に、むっとしている自分がいることに気がついた。
この一カ月の達樹さんと過ごした時間と思い出を全否定されたようで、胸が締め付けられるように苦しくなっていく。
「で? みのりもそれを了承したのか」
「それは……確かに、一方的すぎるって、冷静になったら少し思ったから。でも、離婚届にサインはちゃんとしてもらって、一か月後に私は出すつもりでいるってそのとき話したから」
「ふうん。まぁ、その約束の一カ月まであと少しだけど、どうなんだよ」
あっ君に問い詰められたときだった。
「みのり」
後方からよく知る声が私の名前を呼び、驚いて振り返る。
まさかという思いの中そこにいたのはやっぱり達樹さんで、目を見開いて静止してしまった。