離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「達樹さんっ、どうしたの──」


 か細い手首を強引に引き、力任せに部屋の奥へと連れて行く。

 本来なら今頃、夕食の買い物を終えて帰宅をし、一緒にハンバーグ作りを始めるところだったはずだ。

 その予定は一転、俺の嫉妬心で台無しになりつつある。

 予定より早く仕事が切り上がりみのりに連絡を入れると、これから友達に会ってくるという連絡が返ってきた。

 彼女の実家近くにあるチェーンのカフェに行くという話は聞いていたから、そばまで迎えにいこうと向かったのが良くなかったのかもしれない。

 外から見えた彼女の会っていた相手が男だったことに、気づけば店内に足を踏み入れていた。

 何もやましくない相手だということは、みのりの態度と説明でわかることだった。

 それでも相手を牽制し、不機嫌に彼女を連れ去るという大人げない行動を取っていた。

 自分は、こんなことをする人間だっただろうか?

 そう自問自答もした。

 だけど制御できなくて、暴走した気持ちが止まらない。

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