離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


【今日は約束の日ですね。私たちの家で待ってます。合挽き肉を三百グラム買ってきてください】


 入ってきたメッセージには、短く【了解】としか返せなかった。

 フロントガラスには、霧のような雨がひっきりなしに降り注ぐ。

 久しぶりに帰るふたりの部屋が近づくにつれ、落ち着かない気持ちに押し潰されそうになっていく。

 みのりに会いたい。会って抱きしめたい。

 会わない時間も愛しい気持ちは増すばかりだった。

 それに比例するように、終わりが近づいているであろうふたりの関係から目を背けたい気持ちも増大した。

 この手に抱きしめることも、この想いを伝えることすらもう叶わないかもしれない。

 買い求めてきた合挽き肉にちらりと視線を投げ、小さなため息をつく。


 最後の晩餐は、ハンバーグってことだよな。


 見えてきた高層マンションに覚悟を決めるような気持ちになっていた。

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