離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「混んでるな……お客さん、急いでるとこ悪いね」


 渋滞している道を外れ、路地を走り出したタクシーの運転手が声をかけてくる。


「ああ、いえ」

「首都高で事故があったみたいで、通行止めらしいんですよ。それで、通行規制で下道が混み始めてるみたいで」

「事故って、そんなに大規模だったんですか?」

「何台か巻き込まれたみたいだけど、炎上した車もあるくらいだから結構な事故だよね」


 負傷者が多ければ、うちだけではなく近隣の救急指定病院にも搬送先は増えるはずだが、より重症の患者が高度救命救急センターであるうちの病院に搬送されてくる。

 これもまた、運命の悪戯というやつか……。


『そろそろ将来のために、身を固めることを考えてみないか』


 父親にそう話を切り出されたのは、今から約一年前。

 それまで〝結婚〟というフレーズを全く意識させなかった両親が、初めて見合いの話を持ち掛けてきたのがみのりとの縁談だった。

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