離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「まだだ」


 低く艶っぽい声が鼓膜を震わせると同時、再び快感に全身が粟立った。


「ああぁっ、っ──」


 離れていた分なのか、彼はそれを埋めるように、取り返すように、たっぷり時間をかけて私を抱く。

 思考がとろとろに溶かされて、何も考えられなくなる。

 陶酔しきった私の前に、一枚の紙きれがひらりと出される。

 達樹さんがどこからともなく出したのは、互いのサインがが入っている離婚届。


「これ……どうする?」


 下から揺さぶりながら、目の前でひらひらと見せつける。

 私をこんなにしておいて、なんて意地悪な質問をするのだろう。

 涙の膜でゆらゆらと揺れる視界の中、紙切れが真っ二つに破られていくのを見ていた。

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