離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 マンションの地下駐車場には、達樹さんの所有する車が駐車されていた。

 黒塗りの国内産高級車。

 海外研修に出る前、新居がここに決まってから車も移していたそうだ。

 そんなこと全く知らなかった私は、この車に乗ることも初めて。

 もちろん、達樹さんの運転する車に揺られることも初めてだ。

 結婚して一年。初めてのことばかりの私たちは、本当に何もしないまま離れていたのだと事あるごとに思い知らされる。


「で、どこに行きたいか考えた?」


 マンションの敷地内を出たときには、西の空にある太陽がもうほとんど落ちていて暗くなり始める頃だった。

 外を走る車がぽつぽつとヘッドライトを点灯し始める時間帯。


「それが、寝ちゃってたせいで何も考えてなくて。それに、今日は休んでくださいって思ってたから……」


 今日はゆっくり過ごして、また明日からに備えてもらおう。そう思いながら寝落ちした私に、出かける行き先なんて考える時間は全くなかった。

 目覚めてからも、急いで着替えてメイクを直して、そのまま出発したような感じで今に至る。

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