離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「わっ、何これ可愛い! ゆるキャラみたい」


 ひとり中身を見てきゃっきゃとしていると、横から達樹さんが覗き込んでくる。


「うちの病院の近くにある店のやつ。女性陣に奥さんに何か買って帰りたいんだけどって訊いたら勧められたから」


 さらりと出てきた〝奥さん〟のフレーズにどきりとしてしまう。

 職場でそういう風に話しているのかと知ると、なんだか妙に緊張する。


「ありがとうございます。じゃああとで、映画観るときにいただきましょう」


 ケーキの箱を閉める私の横で、達樹さんが「みのり?」と私を呼ぶ。

 顔を上げかけたところで接近した達樹さんに唇を奪われて、突然のことに目を開いたままキスを受け止めていた。

 ハッとして目を閉じ、深まるかもしれない口づけに身構える。

 しかし、触れ合っていた唇はそっと離れていった。


「何、もっと欲しかった?」

「へっ……?」


 唇を離した達樹さんは私の顔をじっと見下ろし、なぜだかフッと笑う。


「もっとって顔してる」


 そんな風に言われ、一瞬にして顔が熱を持った。

 う、うそ、私そんな顔しちゃってたの!?


「し、してないです! やだ、うそ!」


 ひとり動揺して声を上ずらせる私を、達樹さんはまた肩を揺らしてくっと笑う。


「あとでじっくりな」


 追い打ちをかけるように耳元でそう囁き、赤面する私の頭をぽんぽんと撫でた。

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