「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。
ディアモン視点

ミアを見た時、衝撃が走った。

「彼女だ!」

頭ではなく心が、理性ではなく本能が告げた。

気がつけばセイレーンとの婚約を破棄していた。セイレーンは驚くぐらいあっさりと受け入れてくれた。

何とも思っていない彼女を見てなぜか心がざわついた。

ミアは愛おしい俺の番だ。

愛してる。他には何もいらないと思うぐらい。

でも俺の目はセイレーンを追っている。

理由は分からない。

運命の相手はミアのはずなのに、俺の心を占めるのはセイレーンだった。

彼女はいずれ俺以外の男と結婚する。そう思うだけで怒りで血管がブチ切れそうになる。



自分の心が分からない。

俺は何を求めている?

俺はどうなりたい?

俺にとってセイレーンは何?



分からない。自分の心が分からない。

心と頭が求めている者が別々にあるせいで心が引きちぎられるせようだ。



「ミアが帰ってきていない?」

ミアは結局、学校に戻っては来なかった。学校側には体調不良で早退したと告げた。

邸に帰って俺は自室に閉じこもった。

自分の心と向き合い。自問自答しているとウェルツナー子爵家から使者が来て、ミアが邸に帰ってこない、何か知らないかと聞いてきた。

俺は壁時計を見た。既に女性が出歩くには遅すぎる時間帯だ。王都でも女性の一人歩きは危険すぎる。

俺はすぐに邸の人間に捜索隊を出すように命令した。俺自身も制止してくる邸の人間を振り切って邸を出た。

どうしてこんなに胸がざわつくのだろう。

ミアは学校から出て真っすぐ邸に帰ったのだと思った。そのミアが実は王都をぶらついていた。だから胸がざわついているだけだ。

俺の考えすぎだ。そう思いながら俺は馬を走らせた。

しかし、俺の願いはむさしくも砕け散った。

ミアはなぜか森で発見された。それも死体となって。獣に食い散らかされ、判別はできなかった。身に着けている所持品などから断定された。

「あ、あ、あ、あ、あああああああああああっ」

俺は喉がはち切れんばかりに叫んだ。

抱き上げようとした体は崩れ、地面に肉片が落ちる。



何で。どうしてこうなった?

どうして俺はすぐに彼女を追いかけなかった?

どうして彼女を一人にした。

どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうしてぇっ!
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