「君は運命の相手じゃない」と捨てられました。
「う、浮気じゃないか」

「ただの挨拶だよ。本当の浮気なら隠れてする。君は馬鹿だね。それにセイレーンにはもう婚約者はいないから浮気にはならないよ。そんなことも分からないなんて。ああ、だからセイレーンにそんな態度をとっているのか。子爵家が伯爵家に。普通はもっと弁えるよね。しかもこんな人前で堂々と」

じりじりとヤギと羊の獣人は後ろに下がって行く。

「お、俺たちは何も間違ったことは言っていない」

「は?何言っているの?証拠もないのに動機だけでセイレーンを犯人扱いしてたじゃない。しかも動機ってセイレーンにはないよね。だって、別にディアモン・ジュノンが誰とどうなろうとセイレーンには関係ないじゃない。ねっ、セイレーン。あんな馬鹿のことまさか本気で愛していたわけじゃないでしょ。ただの政略結婚の相手だよね」

にっこりと笑って聞いてくるルルーシュ。

笑顔なのに背後にどす黒い影が見えるような気がする。

「そうだよ」以外の答えを言うことを許さないと彼からプレッシャーを感じる。実際、その通りだから何も問題はないけど。

「ルルーシュの言う通りよ」

私がそう言うとルルーシュは満足そうに笑みを浮かべた。

「貴族の婚約や結婚ってそういうものでしょう。ミアのことは騎士団が調べているわ。あなた達素人が邪推することではないのではないかしら?」

私だけなら問題ないとなぜ思ったか分からないけど思っていた彼らは最早口を紡ぐしかなかった。

ルルーシュ・レドモンドは侯爵家。しかも彼はただの侯爵令息ではない。

現王と侯爵夫人の不貞の子なのだ。

妾腹になる為王位継承権はない。それでも容易く手を出して良い相手ではない。

「話はこれで終わりだね。じゃあ、目障りだから消えてくれないかな」

「・・・・はい」

「ん?」

「はいぃぃぃっ!!」

思いっきり裏返った声で返事をした後彼らは蜘蛛の子を散らすように教室を出て行った。

よほど怖かったのだろう。

ルルーシュはとても優しくて穏やかで争いごとを好まない子だから怖がる必要はどこにもないのに。

「ありゃ?教室出て行っちゃったね。もうすぐホームルームが始まるのに。みんな出て行くなんて気が利くね。これで二人きりだ」

そう言って笑うルルーシュは相変わらずだ。

変っていなくてほっとした。
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