どうしているの?ねぇ、先輩…
「七瀬?」
パーカーにマフラーにマスクに冷えピタにって、ひどい格好の私を見て、瞬先輩の目が丸くなる。
「風邪?」
「、…ゴホッゴホッ、違、マス、」
「ちょ、大丈……」
「昨日、…ゲホゲホッ、」
「……昨日?」
「昨日、勝手に帰って、…ゴホッ、…すみませんでした、ゴホッ、」
咳に混じるマスク越しの声に、瞬先輩の眉が下がっていった。
「んなこといーよ。それより熱あるんじゃねーの?」
立ち止まっていた先輩の足が、パタパタと私のほうに近づいてくる。
「風邪引いてんなら今日は帰っていいから」
「大丈夫です、通信、書記の仕事だし、ホッチキス、残りは全部私がやりますから」
汚名返上は早いほうがいい。
咳が止まらなくたって薬が切れたって、熱があったって……座ってホッチキス留めをするぐらい、具合が悪くてもできる。
大丈夫、自分の仕事はちゃんと最後までやり遂げます。
誰にも余計な負担はかけません。
だから、
「ほら、熱あんじゃん」
「、……」
パチンパチンって、ホッチキスを押す私の右手に……瞬先輩の手が、乗っかった。