強盗返し
視界
 ああ、また視える。本当に気味が悪い。
 私は電柱の側に立つあるモノを視界の端にとらえて眉間に皺を寄せる。
 アレは人のように見えるが、枯れ木のような体に手足が異常に長く、この世のものとは思えない姿をしていた。
 ゴリラのように長い腕を地面に付けて、こちらに背を見せてゆらりゆらりと動いている。アレの大きさは塀の高さと同じくらいだ。
 数日前からこの場所で視えるようになり、最初は不法投棄したガラクタかと思っていた。しかし、一緒にいた友人にそれとなく聞いてみたがそんな物はないと言って首を傾げた。
 その言葉を聞いた途端、私は見えてはいけないものを見てしまったのだと一気に血の気が引いたのを覚えている。
 今は見えるだけで何もしてこないから、何もないと思って過ごしている。

「痛っ!」

< 1 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop