強盗返し
 何度も右目を瞬かせると音もなくアレが再び姿を現した。思わず驚いて声を上げると、私は左目を片手で覆った。すると視野は狭くなるが、電柱にアレの姿はない。片手を外して両目で見ると、アレが姿を現した。
 今度は右目を片手で覆った。しかしアレの姿が消えることはなかった。

「どう言うことだ?」

 私は訳がわからず右目から手を外し左目を手で隠そうとして、その手を止めた。

「……え?」

 中途半端に左目を覆った掌にアレがいた。その瞬間、私は理解した。
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