分岐点  ~幸せになるために
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重い扉を開くと パイプオルガンの音色が 

優しく 響いていた。


私は そっと父の肘に 腕を掛ける。

「行くよ。」

小さく言う父と 呼吸を合わせて。

私達は 静かに歩き出す。


控え目な歓声と 笑顔が溢れている

チャペルの真ん中を


一歩ずつ 丁寧に 進んで行く。



こんな日が 来るなんて…


全てを 諦めたことも あったのに。


ウエディングドレスも バージンロードも

幸せな 結婚生活も…


私に 全てを 諦める覚悟をさせた 毅彦。

結局 私を 平凡な道に 戻したのも 毅彦。


正面で 私を待つ 頼太の

緊張した表情を ベール越しに 見つめて。


私の 新しい季節が

始まったことを 実感する。








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