分岐点  ~幸せになるために

街が クリスマスムードで 騒がしくなる頃。


毅彦と 私の部屋で 会うようになってから

2人で 食事に出かけることも なくなっていた。


私達は 普通の恋人達のように 

自由に デートできない。


誰かに 見られたら 大変なことになるし。

人目をはばかる 関係だから。


頭では わかっていたけど。


やっぱり 寂しいって 思ってしまう。


そんな風に 思うことに 危険を感じながら。

でも 私は まだ 止めることが できない。


2人で 過ごす時の 毅彦は

優しくて 甘くて 穏やかで。


わかってる… 限られた時間だから。


いくらでも いい顔が できるって。


ずっと 一緒にいたら 嫌な部分も 見えてしまうけど。


私だって 毅彦の前では 可愛い女の子で いられる。

不満も わがままも 言わないで。


毅彦の 望む通りの 女の子を 演じられる。


2人の関係に 将来は ないから。

今が 楽しい時間ならいい。


2人の考えを 擦り合わせて

口論することなんて 無駄だから。


毅彦にとって 私は 現実からの 逃げ場。


それが 役割だって 私は わかっていた。












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