分岐点  ~幸せになるために

「ごめん、ごめん。」

随分 陽が伸びて 薄明るい夕暮れ。

頼太は 私の前に 小走りで来る。


「ううん。私も さっき着いたばっかり。」

「少し 時間があるから。散歩しながら 行こうか?」


頼太に 肩を押されて 私達は 歩き出す。


「桜 すっかり散っちゃったね。」

「この前 雨降ったからなぁ。」

「桜が散ると すぐに夏だよ。」

「まさかー。沙耶香 焦り過ぎ。」

「そうかな… GWって 半袖着てない?」

「梅雨時って 意外と寒いじゃん。」

「あー。梅雨ねぇ。うん。夏の前に 梅雨があるね。」


私達は いつものように 他愛ない話しをしながら

頼太は さり気なく 公園の中に 入っていく。


「俺さぁ。スッキリしてから メシ食いたいタイプ。」


頼太に 促されて ベンチに座ったけど。

薄暮の公園は まだ人影が 多くて。


「ちょっと ロマンチックじゃないなぁ。」

なんて 頼太は 照れた顔で 私を見た。


「あのね。この前の返事…」


「うん…」


頼太は 真っ直ぐに 私を見るから。


「そんなに じっと見ないで。」

「うん。」

「私で良ければ…」


そこまで言うと 頼太の顔が 綻んで。


「ヤッター。」

「あの… まだ 最後まで 言ってないんだけど?」


「いい、いい。今ので 十分。」

「聞きたくないの?」

「これから 聞くチャンスは あるから。」


頼太は 跳ねるように 立ち上がって。

私の腕を引いて 私のことも 立たせた。


「早く メシ行こう。俺 腹ペコ。」


私は これから 頼太に 振り回される。


でも 毅彦との 凪いだ時間の後には

そんな恋が 必要なのかもしれない。






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