分岐点  ~幸せになるために

その日 頼太が予約していたのは 焼肉で。

落ち着いた 個室風の席に 案内されて。


「焼肉って 初めてだね?」

「うん。もし沙耶香に フラれても 肉焼いていれば 間が持つかなって思って。」

「フフフッ。」

「笑うなよ。」


若さなのか 人柄なのか。

頼太の発想は 新鮮で。


頼太は いつも明るくて。

頼太と一緒にいると 

私は ずっと笑っている。


「本当は 断られるって 思ってなかったでしょう?」

「そうでもないよ。まぁ 断られても 諦めないけどね。」


「エッ?」


「沙耶香は 俺の 初恋だからさ」

「まさかー?」


「ホントだよ? あの頃から ずっと…」


頼太の瞳は 急に熱くなって。

私は 甘い気まずさに 俯いてしまう。


「生意気だったのは 照れ隠し。」


「そうだったの?」

「好きな子に 意地悪する小学生みたいだったな 俺。」


真っ直ぐに 気持ちを伝えてくる頼太が

嬉しいよりも 眩しくて。


私は 心の中が ふんわりと温かくなって。


幸せって こういう事?





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