囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 異世界人が目的にあった人を転移させる。了承は得るというが、それは記憶が無くなってしまったらば意味がないのではないか。それを伝えているのだろうか。
 そして、ハッとする。自分は現世の記憶がある。けれど、異世界に転移する事を事前に聞かされていないのだ。この人は嘘をついている。それともセリベーノ伯爵夫妻が嘘をついているのか。それはわからない。

 やはり、ここは自分の世界ではない。
 優しくしてくれるから、この領地の王子だからと言って、信頼していい人ではないのだ。

 そう思うと、一気に体の体温が下がっていくのがわかった。

 ここでは、1人だ。

 自分で考えて、行動しなければならない。人を疑って自分の意志で生きていかなければいけないのだ。


 「シュリが特別な存在というのは、記憶が残っているのも関係している。けれど、1番の理由はハーフフェアリだという事だよ。この国で人間と妖精の子どもは生まれてきていない。実際、人間ほどの大きさを持つ妖精はほとんど存在していないんだ。存在したとしてもとても高貴で妖精の中でも女王的地位を持つことになる。そのため人間の前にはほぼ姿を現さないだろうね。俺も今までで1人しか知らない」
 「そんな貴重なハーフフェアリに、どうして私が」
 「どうしてだろうね………」

 ハーフフェアリの話になると、ラファエルの顔色が変わるような気がして、朱栞は気がかりだった。顔は笑っているのにどこか切なげで、今にも泣き出しそうなのだ。
 朱栞は、そんな彼の表情を見ると、体の奥が妙にざわつくのだ。


 「さて、ここからは君と俺との話をしよう。シュリとは2つの約束。いや、契約を結びたいと思っているんだ」
 「契約?」



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