囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 けれど、ラファエルが話したように、朱栞の1番の目的を叶えるためには、条件はいいのだ。
 見知らぬ国で異世界人を探すのは難しいだろう。もし可能だとしても時間がかかってしまうに違いない。それに、朱栞はハーフフェアリでもある。その存在がどのように生活に影響するのかも未知数だ。魔法だって、言葉だってまだ覚えていないのだ。一人立ちまでは遠い。


 そうなれば、朱栞のする事は決まっている。


 「………わかりました。ラファエル様、その2つの契約お受け致します」


 契約を承諾するのみだ。

 2つ目の契約は、婚約なのだから穂純が見つかったのならば破棄すればいいだけだとも思った。

 朱栞がやうやうしく頭を垂れると、ラファエルは細い指で朱栞の頬に触れた。その手はいつものように温かかく心地よいはずなのに、朱栞は少しだけ怖いと思ってしまい、小さく後ずさった。
 すると、ラファエルの表情は一瞬固まり、ぬくもりは離れていく。


 「それでは、これからよろしくね。妖精の契約と婚約は後ほど。君を大切にして、守り抜くと誓うよ。俺の婚約者」


 はにかみ少し頬を赤く染めたラファエルの笑顔の奥にはどんな感情があるのか。
 そんな事を考えると、朱栞は曖昧な笑みを返すしか出来なかった。





 
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