【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。
「あ、神山先生!」
「あ、野山先生……」
診察を終えた野山先生が、中庭で座っている俺を見つけて歩いてきた。
「……神山先生、聞いた。はる君、大丈夫なの?」
そして少し間を開けてから、そう言った。
「……一旦は落ち着きましたが、油断は出来ない状況です」
俺は野山先生にそう言うと、開けたばかりの缶コーヒーを飲んだ。
「そう……。はる君、頑張ってるのにね?」
「……はい。だからこそ、早く治してやりたいんですけど」
「そうねぇ……。ドナーは順番待ちだから、はる君の番が来るその時まで、はる君が頑張ってくれるといいんだけどね……?」
野山先生のその言葉は、俺の胸に強く刺さって、俺は何も口を開くことが出来なかった。
野山先生と俺は、研修医時代からの仲で。何かあるとこうやってふたりで話をしたものだ。野山先生は、俺のことをいい先生だと言ってくれる。
俺も野山先生に対して、そう思う。お互いを尊敬し合うからこそ、辛いときもあるんだなって思う。