【完結】一夜の過ちで身籠ったら、夫婦が始まってしまいました。



 しばらくすると、一旦の治療で、はる君の容態は安定した。だけど油断が出来ない状況にまで差し掛かっていた。

 「神山先生……はる君は……」
 
 「一旦は落ち着いた。……だけどもう、そろそろ手術をしないと……」

 「……ドナーが、見つかるといいんですけど」
 
 「そうだな。だがもしはる君にこの先、ドナーが現れて手術が出来たとしても。……手術後に合併症が起こる可能性だって、十分にあり得る」

 「…………」
 
 「田崎、お前は立派な看護師だ」

 「……っ、先生……」

 田崎はきっと、苦しいんだ。目の前で苦しんでるはる君を見たからこそ、その苦しみが分かるからこそ。彼女なりに葛藤しているのだと思った。

 「はる君の様子、しばらく見てみよう」

 「……はい。カルテ、持っていきます」

 「よろしく頼む」

 はる君を治す方法が、心臓移植以外にあるとは考えられない。いつだってドナーは順番待ちだ。
 次にはる君に順番が回ってくるのは、いつになるのだろうか……。


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