仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。


「……咲良、これお土産」

「え? お、お土産ですか?」


 蓮司さんは、カバンの中から可愛い包装紙が出てきて手渡した。


「クッキー、なんだけど……嫌い?」

「いえ! 好きですっ」

「良かった。敦志が買っていけって言うから─︎─︎─︎……」


 敦志さんって、第一秘書の荷物取りに来た人だよね。そうだよね、蓮司さんが私のために買ってくれるわけないよね……。


「あ、ありがとうございます。私、ご飯準備するので……蓮司さんはお風呂、先に入ってください」

「あぁ、ありがとう。咲良のご飯先に食べたい」

「っでも、準備しなきゃですし……なので」


 あぁ、もう……ダメだなぁ。なんで勝手に傷ついてるんだろう。なんで、好きにならないでって言われていたのに好きになったんだろう。


「分かった、先に入らせてもらう」

「は、はい」


 蓮司さんがリビングを出たのを確認すると、キッチンに入って味噌汁が入っている鍋に火をつけた。
















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