また逢う日まで、さよならは言わないで。
「いらっしゃいませー。二名様でよろしいでしょうか?」
店の中に入ると、シンプルな白い家具がそろえられており、壁のあらゆるところにはドライフラワーが飾ってある。
店員さんは笑顔窓際の席へ案内してくれた。
私たちは対面で席に着いた。
店員さんが水を持ってくる。
目の前で立花さんが、私が見やすいように、私の向きでメニュー表を置いてくれる。
「決まった?」
車にいた時とは違う方向から立花さんの声が聞こえる。
車の時は、目が合わなかったからまだよかった。
だけど、今は顔をあげれば、立花さんがすぐそこにいるのだ。
私はなかなかメニュー表から目線をずらすことができなかった。
「決まりました」
私がそういうと、立花さんはそこにいた店員に声をかけ、呼んだ。
「何にしたの?」
「この日替わりランチにします」
「飲み物は?」
「紅茶で」
「アイスとホットどっちにする?」
「アイスで」
「おっけー」
そこで丁度やってきた店員さん。
「この日替わりランチ2つで。飲み物はアイスコーヒーとアイスティー1つずつで」
「かしこまりました。注文の確認お願いいたします。日替わりランチ2つとお飲み物はアイスコーヒーとアイスティー1つずつでよろしかったでしょうか。」
「はい、あと、1つお願いがあるんだけど」
「なんでしょう」
「店長今日いる?」
「はい、お呼びしましょうか」
「うん、お願いしていいかな」
「かしこまりました。失礼します」
店員さんは、軽くこちらにお辞儀をしてから、店の奥へと入っていった。
「ここの店長さんとは知り合いなんですか?」
「やっと、顔をあげたね」
そういって、口角をあげた立花さん。
立花さんと目が合ってしまい、恥かしくなって自然と目を伏せてしまう。
「質問に答えてください」
「來花ちゃんが顔をあげたらね」
「それはずるいです」
「いいの?質問に答えなくて」
「……」
「あ!」
「え?」
立花さんの驚いた声に、顔をあげてしまう私。
特にさっきと何も変わった様子はなく、立花さんがただ無邪気に私を見て笑っているだけだった。
「だましましたね?」
「だって、いつまでたっても顔上げてくれないんじゃ、つまらないんだもん」
「……わかりました。もううつむきません」
せっかくの立花さんとの時間。
そんな立花さんの笑顔を見てしまっては、照れるのが嫌で、うつむいていた自分が馬鹿らしくなってしまった。
「質問に答えてくれますか?」
「ああ、そうだったね。ここの店長とは古くからの知り合いなんだ」