誘惑じょうずな先輩。
「それで?」
「……んえっ?」
……それで、って、なに?
抽象的すぎてよくわからなくて、首を傾げる。
そんなわたしに、夏川くんは平然と言ってのける。
「香田さんって、やっぱ遊んでんの?」
…………は?
アソンデル、って、万里先輩みたいな遊び?
やっぱ、って、なに?
わたしって、そんなふうに見られてるの?
「え、ちょ、なに言ってるの夏、川くん」
しどろもどろに聞き返す。
夏川くんはわたしと違って、感情の読めない瞳を向けてくる。
なんだか、なに考えてるのかまったくわからなくて、ちょっと怖い。
「いや、バンリ先輩と仲良いから、そういうことなのかと」
万里先輩が遊び人だから、わたしもそうだと?
なにそれ、なんでだろう。
万里先輩を貶された、というのと、勝手な想像でモノを言う夏川くんに、ムカムカムカっと黒い感情が湧き出る。
なんでこんなにイライラしてしまうのか、
答えはカンタン。
わたし、自意識過剰だから、万里先輩の遊び相手、って、思われたくないもん。