幼馴染からの抜け出し方
購入したばかりの小さなベビードレスの入った紙袋を旦那さんが大切そうに手に持つと、ふたりは売場を後にする。
その幸せいっぱいの後ろ姿に、見ているこちらまで幸せをもらえた気がした。
結婚っていいな……。
ぼんやりとそんなことを思っていると、なぜか由貴ちゃんの顔が思い浮かんだ。
「って、ないないないないない」
一瞬、もしも由貴ちゃんと結婚したら……なんて未来を想像してしまい、慌てて頭を振ってその未来を吹き飛ばす。
だって、ありえない。
由貴ちゃんと私は幼馴染なんだからーー
『このまま幼馴染でいるつもりないから』
すると、先日言われた由貴ちゃんのセリフを思い出して、心がズキッと痛くなる。
言葉通りに受け取るなら、由貴ちゃんは私と幼馴染でいるのをやめたがっているのかもしれない。いつも頼ってばかり、迷惑かけてばかりの私に、とうとう愛想を尽かしてしまったのだろうか。
私たちの関係が幼馴染でなくなってしまったら、いったいなにになるんだろう。
私はこれからもずっと由貴ちゃんとは仲良しの幼馴染でいたいのに。
由貴ちゃんはそうじゃないのかもしれない。
由貴ちゃんはもう私とは幼馴染でいたくないのかな……。
そう思ったら、胸が切なく痛んだ。