幼馴染からの抜け出し方

「結局、めぐみの一番は由貴ちゃんなんだよ」


 ゆかりの言葉にハッとなる。

 もしかして、ゆかりはこのことを伝えるために、私を合コンに連れ出したのだろうか。


「うん。私の一番は由貴ちゃんだ」

「でしょ? だったら大事にしないとね。めぐみを好きだって言ってくれた由貴ちゃんの気持ち」


 そうだね、と私は静かにうなずく。
 

「ありがと、ゆかり。私、大事なことに気付けた気がする」

「それならよかった」


 微笑むゆかりに私も笑顔を返す。

 それから彼女に手を振ると、私はお店を後にした。


 *

 
 外へ出ると、ざーざーと音をたて、本降りの雨が降っていた。バッグの中を漁るけれど、こんなときに限って折り畳み傘を忘れてしまったようだ。

 店先の前でしばらく考えていたけれど、とりあえず近くのコンビニで傘でも買おう。そう思って、雨の中、一歩を踏み出そうとしたときだった。よく見慣れた人物が目に飛び込んできた。


「由貴ちゃん?」


 スーツのまま傘を差して歩く姿から、たぶん仕事終わりで帰宅途中かもしれない。ちょうどよかった。由貴ちゃんの傘に入れてもらおう。


「おーい! 由貴――」


 そう思ったけれど、途中で声を引っ込めた。振ろうと思って上げた右手をゆっくりと下に降ろしていく。

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