幼馴染からの抜け出し方

「めぐは雨に濡れるとすぐに風邪引いて熱出すだろ。ほら、小学生の頃だって雨の中を傘もささないでふたりで公園で遊んでいたら、次の日にめぐだけ高熱が出てしばらく学校を休んだ。中学生の頃も土砂降りの中、傘もささずに家に帰ったせいで熱出してめぐは修学旅行に行けなかった。高校生の頃だって体育祭のときに急に雨が降ってきて、次の日に熱出しただろ。あ、ほら、大学生のときだって……」


 聞きながら、視界がだんだんとぼやけていく。由貴ちゃんの言葉はもう耳に入ってこない。

 私の目にはたくさんの涙が溢れていた。それに気づかれないようにそっと視線を下に向けると、ポロっと一滴の雫が頬に伝った。

 由貴ちゃんは、私のことをまるで自分のことのようにしっかりと覚えているんだ。

 でも、私もちゃんと覚えている。

 私が熱を出すたびに、由貴ちゃんがお見舞いと言って必ず会いに来てくれたこと。

『風邪移るよ』と私が言っても、『いいよ』と優しく笑って、ずっとそばにいてくれたこと。

 いつも優しい由貴ちゃん。
 
 私は、きっと由貴ちゃんがいないとだめなんだ。

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