幼馴染からの抜け出し方

 私と由貴ちゃんはこのままどうなってしまうのだろう。

 きっと由貴ちゃんは勇気を出して私に自分の想いを告げてくれたはず。それなのに私はなにも答えずにその場から逃げた。最低だ。

 それに昨日の女性のことが頭をよぎる。小柄で、可愛らしい人だったな。ふたりはどういう関係なんだろう。

 彼女は由貴ちゃんのことを『蓮見先輩』と呼んでいたけど、職場の後輩かな。だとしたら傘で送っていくほど親しい仲なのかな。


「だめだ。余計に頭が痛くなってきた」


 熱でガンガンと痛む頭にネガティブな考え事はよくない。考えるのはやめよう。今はただ静かに眠っていよう。そうすれば、きっと明日にはこの風邪も治っているはずだから。

 そう思って目を閉じようとしたものの、ふと視線が枕元に置いてあるスマホに向かってしまった。

 こんなふうにピンチでつらいときは、いつも迷わず由貴ちゃんへ連絡していたのに。今は、できない。

 もしもこのまま由貴ちゃんと話すことも会うこともできなくなってしまったらどうしよう。

 いつも当たり前のようにそばにいてくれた由貴ちゃんがいなくなってしまったらどうしよう。

 昨日の女性が由貴ちゃんの彼女になってしまったらどうしよう。


「そんなのやだ」

< 76 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop