またいつか君と、笑顔で会える日まで。
あれは雪が降るぐらい寒い日だった。小5のときのことだ。

最低気温は氷点下でかじかむような寒さの中、電気の止まってしまった部屋の中で毛布をかぶっていた。

朝から続いた酷い頭痛は夜になっても絶え間なく訪れあたしを苦しめた。

母はその日も帰りが遅く、市販薬でしのごうとしたものの頭痛は収まらなかった。

寒気がし、寝ていることも出来ず熱は40度を超えてしまった。

朦朧とした意識の中で無意識に母の姿を探していた。

「――お母さん!」

苦しみ何度も母の名前を呼んでいた。そのあとの記憶は飛んでしまっていた。

意識が戻った時、あたしはアパートの廊下に壁を背にして座り込んでいた。

そのとき、何やら話し声がした。

顔を持ち上げると、母と隣の部屋に住むおじさんが言い合いをしていた。

『この子、廊下に倒れてたんだぞ!?アンタ、この子の母親だろう!?こんな時間まで娘を一人で家に残して一体何をしていたんだ!?』

『あなたには関係のないことよ。うちのことに口を突っ込まないでいただけます?』

『何を言ってる!!こんなことして……。アンタがしてることはネグレクトだ!!』

『なによ、ネグレクトって!!』

『育児放棄のことだ!!そんなことも知らないのか!!こんなになってもアンタみたいな母親のことを待ち続けるなんて……可哀想に!!こんな夜遅くまでほっつき歩いて酒の匂いぷんぷんさせて帰ってくるなんて……!!それでも母親か!?』

ネグレクト。

何度か聞いたことがある言葉だった。

そうか。ネグレクトって……育児放棄のことか。お母さんがあたしにしていることは育児放棄というの……?
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