またいつか君と、笑顔で会える日まで。

でも、ちゃんと家に帰ってきてくれる。だから、きっとあたしは……

育児放棄なんてされていない。大丈夫。ちゃんと愛されてる。

『お母さん、おかえり』

熱でぼんやりとしながら必死に笑顔を作った。

幸せがふわりと逃げないように。

そしてなにより、隣の家のおじさんから怒られている母を助けるために。

『あっ、リリカ!目が覚めたのね。ほら、部屋に入るよ!まったくもう。部屋から出ないでって言ったじゃない』

母の声にはほんのわずかな怒りがこもっていた気がする。

でもきっとそれも気のせいだ。

熱にうなされていたせい。

玄関扉を開け、強く背中を押されて体がよろめく。

そのとき『可哀想な子だ……』とおじさんが呟いたような気もした。

だけど、きっとそれも幻聴だったに違いない。

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