またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「――お母さん、あたしバイト行ってくるから」

今日のシフトは18時から22時だ。高校生は22時までしか仕事ができない。もう少し長く働くことができればいいのに。

「分かった。あっ、帰りビール買ってきてよ」

まだ飲み足りないのかと呆れながら首を横に振る。

「無理だよ。どこも未成年には売ってくれない」

「バイト先のコンビニで買ってくればいいじゃない」

「やめてよ。そんなことしてたらクビになっちゃう」

「じゃあ、いい。もう少ししたらたっくん来るから一緒に買いに行ってくる」

「……え。来るの?」

唇が小刻みに震えだす。

「言わなかったっけ?もうすぐ来るよ」

「へぇ。あたし、もう行くから!」

動揺しているのを母に気付かれないように慌てて玄関に向かい革靴に足を通す。

アパートの廊下を走り抜け、階段を駆け下り自転車置き場へたどり着いた時、「よお」と右手を挙げて背の高い男がこちらへ歩み寄ってきた。

母のいうたっくんとは高橋宗次郎のことだ。

50代半ばをすぎたというのに定職にもつかず行きあたりばったりの生活を送っている。

この男と母の付き合いはあたしが中2の頃からだからもうすぐ4年になる。母の内縁の夫。

そして、あたしの世界一大っ嫌いな男。

最近、あまり顔を出さないから気を抜いていた。
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