またいつか君と、笑顔で会える日まで。
前の席に座る彼女は問題児だった。

遅刻は当たり前。

この日も2限の途中、教室の後ろの扉が遠慮がちに開けられた。

立て付けの悪い扉は少し動かすだけでガタガタとうるさい音を立てる。

今日もそれは例外でない。

なんとか教室に入り、床に手を突きまるで自衛隊のようにほふく前進しながら自分の席まで向かおうとしていたリリカちゃんにあちこちからクスクスという笑い声が上がる。

「一橋!!今日も寝坊か!!」

数学の先生に怒鳴りつけられたリリカちゃんは渋々立ち上がると、乱れてしまったベージュアッシュ色の前髪を指で撫でつけた。

「えー、バレた?」

「バレバレだ!」

「嘘~!先生、耳いいね!今日こそは見つからないようにって細心の注意を払ってたのに!!」

「全くお前って奴は!早く席に座れ!!」

先生に怒鳴りつけられてもリリカちゃんはいつも飄々としている。

「はぁーい!」

と陽気な声で返事をすると、ふんふんっと鼻歌交じりに自分の席に腰かけた。

高2に進級してから1か月が過ぎた。

ゴールデンウィークが明けた頃には浮足立つ教室内の雰囲気は徐々に落ち着いてきた。
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