またいつか君と、笑顔で会える日まで。
胸の奥底から沸き上がりそうになる感情をぐっと堪え、一度深呼吸すると玄関のチャイムに指を伸ばした。

小学生の時は玄関の呼び鈴を押す瞬間が大好きだったけど、少しだけ成長した今、押すことを躊躇してしまう。

当時幼かったあたしは、温かい玄関に足を踏み入れると自分もその家族になれたように錯覚していた。

だけど、どうやったってあたしは家族にはなれない。

あたしがその家に足を踏み入れることで幸せな家族の均衡が崩れてしまう。

『リリカちゃんとは遊ぶなってお母さんに言われたの。だから、帰って』

そう言われた理由だって今はちゃんと理解できる。

グッと奥歯を噛みしめてチャイムを鳴らすと、インターホン越しに「はい」という女性の声がした。

「こんばんは!一橋です。夜分遅くすみません。萌奈ちゃん、いますか?」

インターホンにはカメラがついている。きっと中のモニターであたしの顔を確認できるはずだ。

ちょっと緊張しながら言うと、「ちょっと待ってね」という言葉の後、あっけなく玄関扉は開けられた。
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