またいつか君と、笑顔で会える日まで。
「こちらへどうぞ?」

インターホンのついた門柱から玄関までは少しだけ距離がある。

あたしは恐る恐るアプローチを歩き玄関に向かった。

「はじめまして。一橋リリカです。あのっ、萌奈ちゃんはいますか?」

玄関先までくると、髪を一つに束ねたエプロン姿の女性が立っていた。

萌奈のお母さんだろうか。ぱっちりとした目元が萌奈とよく似ている。

「ごめんなさい。起こしてくるから少しリビングで待っていてくれる?どうぞ、あがって?」

「いえ!!ここで大丈夫です。あの……起こしてくるからって萌奈どうしたんですか?」

「少し疲れちゃったみたいで寝てるの」

「え。寝てる?萌奈、具合でも悪いんですか!?」

今日あの土砂降りの中傘も差さずにいたせいだろうか。風邪でもひいた?それとも――。

「ううん、大丈夫」

「あー、そうなんですね!!よかったぁ……」

ホッと胸を撫で下ろすと、おばさんはあたしの様子を見て少し驚いたように見えた。

でもすぐに元の表情に戻った。

「心配してくれてありがとう。ちょっと待っててね。呼んでくるわ」

「いえ!寝ているなら大丈夫です。これを渡し……――」

肩にかけたバッグに手をかけると、おばさんは小さく首を振った。

「萌奈も喜ぶから。ごめんね、ちょっと待っててね」

おばさんがスリッパをパタパタと鳴らして階段を駆け上がっていく。

一人玄関先に残されたあたしはぐるりと家の中に視線を走らせた。

明るい家だ。照明が明るいのではない。家の中の雰囲気がとても明るいのだ。
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