こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜
突然だった。
妊娠9ヶ月後半で胎児の心臓停止がわかった。
検診で胎動をあまり感じられないんですと言ったら
心音が確認できなく
そのまま
私は入院をして出産と同じように子供を生み出したが
もちろん産声も上げることなく、、、

もう
私もこのまま死んでしまいたかった。
原因は分からなかったかが
あれがいけなかったのだろうか
これがいけなかったのだろうか
ああすれば
こうすれば
と後悔だけが渦巻いて
自分を抑えきれずに衝動的になる私に
鎮静剤が打たれ
強制的に眠りにつく。
眠っている間だけが平和だった。

私が病院のベッドでぼんやりとしていると
ましろが理恵に連れられてやって来た。
本当はましろを連れてこないでと頼んでいたのだが。

ましろはぼんやりとする私の傍に立ち
小さな手を私の頬に当てた。

「お母さん、泣かないで。
ましろ、いい子でいるから。廉くんの分まで何でも頑張るから。
ましろがいるから、お母さん。」

廉と名付けられたましろの弟。
ましろは喪失感に支配されている母を気遣い
亡くなった弟を愛おしみ
私を守ってくれているような気がした。

か細いましろを抱きしめて
私は思いっきり泣いて
家族でこの世に生を受けなかった息子、弟を
愛しんで行こうと思った。

この時の樹は
やはり悲しんでいた。
私を気遣いつつも
どうしようもない悲しみの中にいた。

義母との訣別以来
樹がいつ離婚を言い出すのだろうと思っていたが
事の真相を知った樹が
私に謝ってくれた。
義母と訣別した私を非難することも
義母を擁護することもなく
いっそう
腫れ物に触るように
慎重に私に対して接していた。

廉と名付けた息子の亡き後の
悲しみを樹なりに
思い遣ってくれ
自分の悲しみとともに
寄り添ってくれるようになった。

翌年から
廉の命日には3人で手を合わせに行く。
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