こんなにも愛しているのに〜すれ違う夫婦〜

樹と茉里それぞれの思い2

斉木が出て行って俺たち二人が残った。

「会社を辞めたの?」

「辞表は提出してきた。」

「彼女とのことに責任をとって?」

「それもある。
でも一番大きな理由は、縛り付けられて身動きが取れないと、
悩んでいた自分の浅はかさに
今更ながらに気づいた。
縛り付けていたの自分だった。って。
三谷から言われた。
これで自分も心置きなく辞められますって。」

「また一言お相談もなく、辞めちゃうのね。
今まで、あなたのことを心配してきた私は何だったのかしら?
心配させるだけさせといて、最後は事後承諾。
いつもそう。
そんなに何でも自分でできるんだったら、これから一人でも十分に
暮らしていけるでしょ。
こんなことがあっても、この後に及んでも、あなたはあなた。
私は何のためにいるのかしらね。
あなたの心の拠り所でも何でもない。便利なメイドさんかな。」

「茉里、、、
違うんだ。
自分が情けなくって、なんとか自分が納得する自分になって、
茉里と向き合いたかったんだ。」

「それが
独りよがりだっていうのよ。
少し、考えて。今までの自分とこれからの自分。
弱くって、誰かに頼りたくって、誰かに逃げたくなるのは、
あなただけじゃないのよ。
私だって、誰かに支えてほしい。
私だって、あなたを支えられるあなただけの女でいたかった。。。
あなたの一番だと思っていたのに、一番ではなかった。
今回のことでよくわかったわ。
男女の関係があるだけが、不倫ではないと思うの。
あなたと彼女が持っていた時間が、気持ちが私に対する不誠実な事実だと
私は思う。」

「茉里、、、」

「離婚してほしい。
私のことを思うなら離婚してほしい。」

「それはできない。
もう一度、やり直させてほしい。
ましろには、心底嫌われて信頼も失ったかもたかもしれない。
茉里からもそうかもしれない。
だからといって、これから茉里たちと他人になるのは
いやだ。
会社を辞めて、人生をやり直すつもりだ。
だから、俺を見ていてほしい。
俺も、二人と一緒に生きていたい。」

必死に頼んだ。
土下座だってする。
しかし
どんなに思いを尽くして願っても今の茉里には、俺の思いが届かなかった。

理恵さんの仲立ちで、
その日は話が平行線のまま、後日改めてということで別れた。

斉木には
俺と連絡を取らない
近づかない
今後一切関わらないということを
約束させる
ということになった。

もちろん茉里たちに対しても。
茉里は彼女に対して、
何の要求もしないと言っていたが
今後自分たちを脅かすようなことがあったら
法的手段に訴えるという。

「結局彼女は、一言も謝らなかったわね。」

理恵さんが最後にそう言った。



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