アスミルセカイ

居残り日直



4月某日。

「おはよ〜、雫」

「おはよ、未来。日誌持ってきた?」

「げっ!今日日直だっけ!?やばし!行ってくる!!」

「行ってらっしゃーい」

私、成瀬未来(なるせ みく)はこれでもクラスの副級長。
副級長になったせいで、私は…

「あれ…日誌ない」

パンッ

「ったああ!」

後ろから日誌で頭を叩かれる。
級長、九条春樹(くじょう はるき)である。

「仕事が遅いんだよ、ばーか」

「誤差の範囲でしょ!?」

べー、と意地悪に舌を出して、階段を登っていく。

「な…、待ってよ!」

春樹は私の1番古い幼馴染。
物心ついた頃からずっと一緒だった。
昔はそれでもめっちゃ可愛いと思ってたのに、だんだん憎たらしくなって。

「おお、春樹。おはよう!!」

「春樹くん、おはよう!」

「おはよう」

(何であれが人望厚いの…)
どちらかというと、憎いのではなく、寂しい。
近い存在なのに学校では遠く感じる。
私達は級長、副級長ということで、先生が席を配慮し、隣になった。

「あれ、未来。日誌は…」

「あー、春樹に取られた」

「ははーん」

「何よ、雫。なんでニヤニヤしてるの」

「んー良かったね」

「そういうのほんと辞めてってば」

「ごめんごめん〜」
私は春樹以外に恋したこと自体がまずない。
初めて会った時からずっと一緒だからかもしれない。
歳を重ねるごとに、私この人のこと好きなんだ、と思うようになった。
「おい」
「何、春樹」
「俺が黒板やるから、お前は日誌書いといて」
「んー、りょ!」
春樹はカバンを机の横に置くと、朝練の為に体育館へ急いだ。
「おはよう」
「おはよ。…あれ。朝陽は?」
「ああ、今日も行方不明」
「あんのバカ…またか」
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