心理作戦といこうか。
合成皮革の椅子に座ると少しひんやりして気持ちよかった。
点滴に時間が掛かるから山内さんはもしかしたら売店にでも行ったのかも知れない。
優しい彼の事だから点滴室に戻ってずっと待ってるのかも知れない。
もし、後者ならまずいと思い、立ち上がりそちらへ向かってみることにした。
けれど、遮るように目の前が真っ暗になったように影に覆われる…そんな感じ。

「真琴。いい加減気付けよ。」
立ち上がった瞬間に腰が抜けて座っていた椅子に着地した。
腕を掴まれそうになったが、おもいっきり避けてやった。

「真琴!」

今度はおもいっきり睨んでやった。
そうだよね。
あなたはお留守だったから知らないよね。
だったら、私の苦しみも分かるわけないよね。
だから、堂々と病院まで来れたんだ。

「真琴の番号は何番?
 モニターの番号で真琴の番号があるなら会計に行かなきゃだろ?」

無視。

「病院の人だって真琴がお会計してくれないと困るからモニターに出てるなら行こう。」

無視。

「真琴が考えてる事は分かる。
 でも、此処では話せない。
 とにかく家に帰ろう。」

「山内さんは何処にいるの?」
彼を睨みながら低めの声で山内さんと私の鞄の居場所を聞く。

「山内さんは帰ったよ。
 だから、俺がここにいる。」

一番会いたくない人なんたけど。。。

「山内さんに鞄預けてるから彼に会いたい。
 玲くんは帰っていいよ。
 今日は山内さんのお家にお邪魔になるからっわあ!?やめて!!」

最後まで言われる前に担ぎ上げられた。
まるで俵を担ぐかのごとく。

「玲くん!!おろして!!」

足をバタつかせ抗議をしても玲くんの腕でなんなくホールドされて動かない。
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