苺タルト、ポテトキッシュ、みかんジャム、バニラシェイク
ポテトキッシュ
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ポテトキッシュ
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温かい料理が好きだ。
冷えた心の芯まで暖まるような、ホカホカの料理が好きだ。

「昨日のポテトサラダで作ってみた」

そう言って出されたのが、ピザのようなグラタンのような。
湯気のたつ円盤型の料理。

「なあに、これ?」

「キッシュ」


「……キシュー?」

「うん、まあそれでいいや。

パイシート敷いて、中にポテサラと卵混ぜたやつ入れて、上にチーズかけて焼いたの」

「へー」


感心していると、パン切り包丁で4つに分けてくれる。
あ、歪んだ。

「……どれがいい?」

こわばった声色で聞かれて、躊躇なく指差す。

「この大きいやつ」

「素直だね。まずいかもしれないのに」

「そんなことないよ」


休日の穏やかな昼下がり。
2人で「いただきます」と手を合わせた。

フォークで端から切って、まずは1口。

喉に染み込むまろやかな香り。
舌にじゅわーと広がるチーズの旨味。
噛む度崩れる、ほくほくのじゃがいも。


「おいしい」

「そう?」


何てこと無さそうに頬張る相方。
もったいない。こんなに温かくて出来立てでおいしいのに。

「おいしいよ、ほら、バターがおいしい。
この黄色いの」

「バターじゃなくてマヨネーズね、それ」


ちくしょう。間違えた。


「本当においしいんだってば」

「はいはい。分かるよ」


どうでも良さそうに牛乳で流し込んでいる。
そんなに言うなら、その分、自分にくれ。

心の中でぼやきながら、2つ目に手を付ける。


料理はもう冷めていた。
でも温かさはそのままだ。

うん。うまい。


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