推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
午後七時 西浦さん視点
**** 午後七時 西浦さん視点 ****


 残業が始まってから、浮田課長の視線が私に集中している気がする。私が少し席を立とうものなら、課長もガタッと立ち上がる。どうして……?
 

「浮田君は今日の残業何時までするの? この後に飲みに行く?」
 
「申し訳ありません。業務の終わる目処が立っておりませんので……」
 

 部長が浮田課長に声を掛けたけれど、浮田課長はどうやら断っているようだ。その間も私をジッと見つめている。こんなにあからさまに、浮田課長から見つめられた事は過去にあったか? 無い、全く無い!

 
 浮田課長の私を見る視線は熱く熱を帯びている。私は自分の身体が少し熱っぽく火照ってきたのを感じた。


 ふと浮田課長の少し薄い唇や柔らかそうな髪を触ってみたい衝動に駆られる。いや、そんなことをしたらアノ課長のことだ、顔を真っ赤にして目に涙でも貯めて逃げてしまう。それに浮田課長の思い人は多分「田中君」なのだから。今日のお弁当の中身だって田中君の大好物ばかりだったじゃない。きっとリサーチ済みだったんだわ。田中君が自分を探しに来ることを想定して、私を隠し蓑に使っていたのよ。浮田課長、策士ね……。恐ろしい子!
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