推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
午後七時 浮田課長視点
**** 午後七時 浮田課長視点 ****


 西浦さんの残業は今のところ終わりそうにない。どれだけの業務を抱えているのかと心配になる。少し考えないといけない。もしもう少ししても終わりそうにないなら、俺が全てやるからと帰宅させよう。本当は何処か食事へ誘いたかったが……。
 

「浮田君は今日の残業何時までするの? この後に飲みに行く?」
 
「申し訳ありません。業務の終わる目処が立っておりませんので……」
 

 部長、悪いけれど邪魔です。貴方が目の前に立つと、その大きなお腹で隠れて西浦さんが見えなくなるのです。もしも、今、この瞬間に帰宅していたら怒りますよ。どうぞ早急にお帰り下さい。
 
 
 ようやく諦めて帰って行った部長。良かった、あの人はしつこいのだよ……。ん? 西浦さんの様子が変だぞ。
 

「西浦さん……? どうかした? ん……?」
 

 俺は思わず近づいて行って真横に立つ。顔を見るとかなり赤い。
 

「西浦さん顔が赤いよ……」
 
「だ、大丈夫……です。あぁぁぁ!」
 

 心配でしょうがない俺は思わず彼女の熱を手で測る。ああ、これは熱がありそうだぞ。
 

「に、西浦さん! 熱があるんじゃないかな? 残業なんていいから、今日は帰りなさい……」
 
「そ、そんなに……ち、ちかく……」
 
「え? 家は近くないの? 分かった。俺がタクシーで送っていくから」
 

 何てことだ! 彼女は体調不良だったんだ。それに気が付かないで残業させていたなんて、俺は上司失格だ! 彼女を家まで送り届けてあげなくては。任せて、西浦さん!

 
 俺は直ぐさま帰り支度をし、タクシーを呼んで彼女を家まで送り届けることにしたのだった。
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