推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
浮田課長視点
 俺の名前は浮田卓(すぐる)、四〇歳。少しフワッとした猫毛で地毛が少し茶色い。背は185センチあるので、満員電車の中では頭が他の人より上にくるので助かる。


 中学高校と進学校に通い、大学は都内の国立大学を出た。中学高校では俺の容姿が王子様っぽいとかで、女子からは王子様扱いをされていたのだ。何をやっても「可愛い」と言われ、誰も俺を否定しなかった。ちょっとしたアイドル扱いで、俺が校内を歩けばキャーキャー悲鳴も聞こえていたのだ。


 では女遊びが激しかっただろうと思われるが、決してそうでは無かった。女子達は徒党を組んで「浮田君を愛でる会」を作り、誰一人抜け駆けすることを許さなかったのだ。もし、俺に告白しようものなら全校女子生徒からのシカトが待っていると聞いた。


 その所為でモテてはいても誰とも付き合う事も無く、進学校なので勉強も大変だった為に童貞のまま卒業する。

 
 大学時代はハッキリ言ってまたモテた。飲み会に行けば女性が自分の周りに群がり、男友達からは嫌みを言われることもあったのだ。


 しかし、側に寄られても女慣れしていない俺は緊張で何も話せない。他の奴らみたいにお持ち帰りも出来ず、いつも手ぶらで帰宅していた。きっと女性に眺められる期間が長かったからだろう。受け身が板についてしまったのだ。


 その内、大学内で俺には許嫁が居るだの、長年付き合っている年上の彼女が居るだ等と噂が飛びかい、女性からの誘いは目に見えて減っていった。


「一途で硬派な浮田君」と女子に言われ、バレンタインのチョコは大量に届くが、皆「遠くから見守っています」と手紙に書かれているだけだった。


「遠くから見守らないで、俺を奪ってくれ!」と、何度枕を濡らしたことか。
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