推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
午前十一時五〇分 西浦さん視点
**** 午前十一時五〇分 西浦さん視点 ****

 
「浮田課長。会議が無事に終わって良かったですね」
 
 
 私は会議室の片付けをしながら浮田課長に話しかける。課長は「西浦さんのパワーポイント良かったよ」と笑顔を私に向けた。浮田課長は女性の前では緊張するみたいだが、男性相手では結構強気で敏腕課長なのだ。今日の会議で三課の課長がネチネチと、重箱の隅を突くように質問してきていたが、浮田課長は完璧に受け答えをて無事に乗り越えていた。新しく取り入れたいシステムを、いまいち意味の分かっていない上層部のジジ様達にも分かり易く説明し、経費削減の過程も表していた。その自信満々なプレゼンを、私は全て目に焼き付けようと、カッと目を見開いて見ていたのだ。
 
 
「ちょと目が痛いかも……。少しトイレに行ってきます」
 
 
 私が会議室から出ようとしたら、浮田課長が「待ってくれないか!」と私に向かって声を掛ける。
 
 
「今日はお弁当を作りすぎてしまって。良かったら一緒に食べないか?」
 
 
 え、浮田課長! 何ですかその乙女チックな誘い文句。っていうか顔! 乙女かって位に可愛く上目遣いなのですけれど。あ、浮田課長の方が背が高いから下目遣いか……。しかも推しの「武田くん」はドラマでお弁当を作って「同僚の木下くん」に渡していたよな。
 
 
 私はその可愛い浮田課長の顔を見て、悶絶しそうになるのを必死に押さえ、震えながら答えるのだった。
 
 
「……お弁当ですか。そうですね、……お茶、入れてきます」
 
「ありがとう。俺はお弁当を取ってくるよ」
 
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