婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「捜索依頼は……ああ、出せないですよね……」

獣人のこととなれば、対象がサンミリガンの王族でもない限り、グリージアは動いてくれないだろう。
まして、サンミリガンからの捜索隊を、グリージアが受け入れるとは思えない。


「わかりました。見えるかはわかりませんが、占ってみますね」


ギムの名前を念じながら、水晶に意識を集中ささていく。



浮かんできたのは……どこかの家の中のようだ。


「家……」


いつの間にか人型にもどったジンは、情報を取りこぼさないように、メモを取りはじめた。


「日にちは……今月のようね。壁にカレンダーなんてかけてあるから、そこそこお金持ちの家かしら?」


今見えているのは、そう遠い未来ではなさそうだ。


「この人……この赤毛の男の人は……誰だったかしら?どこかで見た気がするわ。歳は、20代中頃かしら?私が見覚えがあるということは、おそらくグリージアの人間ね」

「グリージアの男……」


ギムの商談相手だろうか?
移動する男の動きを、注意深く追った。




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