婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
「道……」


森の入り口でただ一人、呆然と立ち尽くしていた。

どこを見渡しても、〝道〟というような舗装されたものはない。


「うそでしょ……」


まさかと思うけれど、ハロルドの言う道って、この周りよりは踏みしめられた、雑草の倒れたところのこと?
これは、道は道でも〝けもの道〟っていうのよ……

と思いかけて、ああと納得した。

彼の奥さんはウサギっ子。ウサギの獣人だったわ。


薄暗いとはいえ、遠目に見ていたのとは違って、少し先までちゃんと見えている。

一瞬、サンミリガンへ行くことも頭を過ぎったけれど、人が多くなればなるほど身元を知られる恐れが高まることを思うと、少し怖い。
あまり他人と接触するのも躊躇われる。





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