婚約破棄されたので、森の奥で占いお宿をはじめます。
それから、少なくとも2日に1度ぐらいの頻度で、様々な悩みが私の元に持ち込まれるようになった。

前提として、他人を傷付けたり、犯罪めいていたり、インチキなことには応じないのがルールだ。



依頼主は獣人が多く、人間が来ることは稀だった。

主に商人が多くて、今抱えている話を進めていいのかどうか、相手は信頼できる人なのかなんて聞かれることもよくある。
ななかなか判断の難しい内容もあったけれど、私としてはとにかく見たままを伝えるのみ。それだけで、みんな満足そうに帰っていく。



ここにいると、獣人に対する偏見なんてものは一切抱かない。
食堂に来る獣人の中には、気さくに声をかけてくれる人も少なくないし、顔見知りも増えた。


時には子連れで来る獣人もいる。
先日、母親と来店したリスの子どもは、すぐに懐いてくれた。獣の姿のままで、ふさふさのしっぽをや小さな頭を存分に触らせてくれた。


私がここへ来たのは、間違いじゃなかった。
そう確信できるほど、ここでの生活にすっかり馴染んでいた。














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