白いジャージ ~先生と私~

時計は、夜の9時を指していた。


「ずっと一緒にいたいな・・矢沢・・」

先生の腕枕は心地いい。

「なおって呼んでくれないの?」


「俺、なおって一度も呼んだことないぞ!」


「さっき・・呼んでくれたもん・・・ふふふふ・・」


「覚えてね~な!!癖になると授業中呼んじゃうから、卒業までは呼ばない。」


先生は、腕枕していないほうの手で私の頬に触れる。


「愛してる・・・なお・・」


「あ!!なおって言った!!」

私が笑うと、先生も笑う。


「お前・・耳おかしいんじゃね?ふふふふ」


この時間が好き。

緊張感やドキドキから開放された体と心・・


やすらぎに包まれる幸せな時間。


「お前・・・声でかい・・・最高!!」

「え???嘘!!私・・声なんて出してないもん・・」


先生は、はいはいって感じで頷いて

私の首筋にキスをする。


「・・あん・・」

私は、自然に漏れる声を止めることができなかった。


「ほ~ら・・な。いいよ、声好き。お前の声好きぃ~!」

先生は、布団の中の私の体を触り出す。


「あぁ・・ん」


また声が出ちゃう私に、

「おもろいヤツだなぁ・・ずっと俺だけのモンだからな!」


また嬉しい言葉をくれた。



先生は、空いてる手でカーテンを開け、窓から見える月を指差す。


「あれ・・俺だと思って。もし、これから寂しくなったら俺だと思って。今は、お前が呼べばいつでも飛んでいけるけど、これからどうなるかわからないからさ・・」


「やだ・・会えなくなるの?先生・・」


先生は私の髪を触りながら、優しく笑う。

「もしもの話だろ?大丈夫だよ。俺を信じてて。俺もお前を信じてる。もう・・俺らはどんなことがあっても大丈夫だろ・・」


三日月を隠す黒い雲が、風に乗って近づく。

三日月は、隠れたり現れたりしながら、その輝きを増してゆく。


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