白いジャージ ~先生と私~

とうとう・・・スーパーマンに電話をかける日が来てしまった。


お父さんが出張に出掛けた日・・・


その日、お姉ちゃんと私が唯一交わした言葉。


『おはよう』でもなく、『おやすみ』でもなく。



『お前さえいなければ』・・・





月は、とても明るく夜道を照らしている。

明る過ぎる月のせいで、窓から見える道には不気味な木の影が浮かぶ。


『もしもし?』

5日ぶりの先生の声。

初めて聞く電話越し先生の声。


電話って相手が今何してるかってすごく気になるんだ。

だから、あんまり好きじゃなかった。

メールは、相手が忙しければ見ずに済む。

電話をかけると、私・・いつも最初にこう聞く。



『今、大丈夫?』


『おぉ!!準備万端。今から家行こうか?』

電話の声は、いつもよりも少し高いような気がした。

彼氏みたいなこと・・言ってくれる先生。


それ以上優しくすると、私・・・期待しちゃうよ・・


『声聞いたら、落ち着いた。ありがと。』


『泣いてるだろ?じゃ、やっぱ会いに行く。』


ほら・・

またそんなことを言う。


『大丈夫だよ。ほんとに・・先生優しいね。』



『・・俺、心配で眠れないんだけど・・』



先生は、私が何度大丈夫と言っても、会いに来ると言ってくれた。


私の心の声が聞こえたのかな・・


本当は・・

先生に会いたかった。


先生に抱きしめてもらいたかった。


言って欲しかったんだ。


『お前がいてくれて良かった』って。



自分の存在が、誰かを苦しめているという事実は、私の心では受け止められなかった。


私・・いないほうがいいのかな・・


お姉ちゃん・・・


私がいなければ、お姉ちゃんは幸せ?

私の存在がお姉ちゃんを苦しめてる?






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