綺麗になんてなれない




 翌日、私はまたあのポーチを見つけた。
 洗面台の下の物入れ、女性ものの小花柄。手に取って、どうしたものかと逡巡していると、義之がひょっと洗面所に顔をのぞかせた。

「ああ、そのポーチ、捨てていいぞ」

 やけに軽く言う彼に、私のほうがぎょっとした。

「いいの? また来たとき、怒られるんじゃない?」
「もう、呼ばないから」

 予想もしていなかったセリフに、聞き間違いかと思ってしまう。
 うろたえる私に気がついて、彼はしぶしぶ続けた。

「……若葉に遠慮して他の人に逃げてたけど、そっちの方が余計心配させるってわかったから」

 視線をそらした義之のうなじが、なんだか赤い気がして、私の口角が、ひとりでににゅーっと上がっていく。

「……ふふふ」
「なんだよ気持ち悪い」
「なんでもない」
「……あっそ」



 ずっとずっと、この道の先には真っ暗な闇ばかりが続くと思っていた。
 だけど、もしかしたら闇の向こうには、小さな陽だまりが私たちを待っているのかもしれない。
< 24 / 24 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

完璧上司と夜を越えたら 〜隠れ御曹司とはじめる秘密のお試し恋人〜

総文字数/8,933

恋愛(オフィスラブ)1ページ

スターツ出版小説投稿サイト合同企画「第2回1話だけ大賞」ベリーズカフェ会場エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
恋人と破局し、バーでやけ酒していた妃菜子は、完璧上司の桐生佳貴課長と偶然隣り合わせる。前髪をかきあげた横顔に、いつもと違う大人の色気を感じて――彼と一夜をともにしてしまう。 「セフレじゃなくて、君をお試しで恋人にしたいとしたら?」 実は佳貴も婚約破棄をしたばかり。二人は誰にも秘密でお試し交際を始め、恋人として少しずつ距離を縮めていく。そんな矢先、桐生課長が大企業・前園ホールディングス会長の外孫、本名・前園佳貴として世間に公表されてしまい――。 憧れが恋に変わるシークレットオフィスラブ。 ※「1話だけ大賞」エントリー作のため、1話のみの投稿です ※ムーンライトノベルズにも投稿しています
運命の番は真実の愛の夢を見る

総文字数/10,557

ファンタジー10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
美しかった運命という響きが、 ひどく呪わしいものに変わっていく―― 出会った瞬間に惹かれ合うという運命の番。 リーゼの相手は美貌の青年貴族アルベルトだった。 優しい彼と結ばれて、リーゼは幸せな花嫁になるはずだった。 その幸せが、他人の不幸のうえに成り立つものだと 気づきさえしなければ…… *ムーンライトノベルズ、アルファポリス、カクヨムにも 掲載しています
夜には約束のキスをして

総文字数/27,669

青春・友情50ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
十五歳の和真は毎夜、幼馴染の深青のもとを訪れて口付けを交わす。それは二人が十歳の頃からの習慣だった。深青にほのかな恋心を抱きつつも、それを秘めている和真。けれども、嵐の夜をさかいに二人の関係に変化が起きる。 ※他サイトにも掲載しています

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop