綺麗になんてなれない
嗚咽がだんだん強くなって、果たしてどこまできちんと声にできていただろう。
うなだれて、私は義之の胸に額をくっつけた。
目頭がひどく熱を持っていて、雫が次々にこぼれ落ちていく。くずくずと、子供みたいな泣き声を抑えることができない。
ああ、私が義之から離れられないのは、贖罪なんて、冷たい理由からではない。
あの日に与えられなかった温かい真心を、今度こそ彼の心に届けたいのだ。何度でも、伝わるまで。
泣いている私の首に義之の腕が巻き付く。肩に彼の目元が押し付けられる。
「う……くっ、ぁ…………う……」
押し殺した嗚咽が私の耳元に微かに届き、義之の内側に渦巻く苦渋のほんの一端を私に垣間見せる。
熱いものが私の肩に落ちて胸へと滑っていく。私はそれに気づかないふりをしてただひたすらに義之の頭を抱いて、私自身も泣きじゃくっていた。
私たちの恋は、泥臭くて、好きな人と両想いなんて奇跡も起こりはしなかった。
でもきっとそれが普通で当然の現実なんだ。数多の幸せな恋人たちの影で、たくさんのどうにもならない悲しみが息を潜めて涙を流しているのだろう。
奇跡が起きなかったことを恨んでも仕方がない。偶然幸せを手にした人たちの幸福に陰りを作ることなんて望んでいない。他人の幸福を妬まずにまっすぐ祝福して見せるのが最低限の矜持で、最も窮屈に自分を縛り付ける戒めだ。
幸福な人たちの足かせになることだけは、しないから。せめて、傷を舐め合うことを許してもらえないだろうか。前向きでなくても、綺麗でなくても、私たちが、いつか日の下で幸せな日を迎えるために、必要なことだから。
彼の涙の熱を胸に受け止めながら私は、私と彼の痛みが綺麗な雫となって流れ出し、少しでも癒えることを願った。