教えて、春日井くん




正直同級生の女子と聞いて、身構えた。面倒なことになるのが嫌で、俺はその子を探していない。

それにまほは、その子と今の親しくしているらしい。特に俺は関わる気はないし、できれば触れないでおきたい。

秋とそんな話をしていると、廊下から明るい声が響く。



「きーりー!」

茶髪で小柄な女の子が小走りをして行った。

俺と秋は目を見合わせて、その先を追う。



茶髪の女の子……柊木亜未が抱きついた相手に驚愕した。

艶やかな黒髪の女の子は、可憐な雰囲気を纏っていて微笑むだけで見惚れている男が何人もいる。

この学校の高嶺の花で歩く清楚と言われている、御上綺梨だ。



「まじか」

「清楚の下の名前、キリなんだ。かっけー」

あまり女子に興味のない秋がしょうもないことを呟いている横で、俺はまほが御上さんといる想像をしていた。


……ダメだ、絶対会話が合わないだろ。本当に御上さんなのか?




疑ってしまい、家に帰った後にまほに聞いてみると即答された。


「うん、御上綺梨って名前だけど」

彼女が学校でどういう風に見られているのかと、まほに話すと噴き出した。


「歩く清楚とかウケる」

「……話し合うの?」

「綺梨、おもしろいから話してて楽しいけど」

へー、意外。真面目で大人しいのかと思っていたため、やっぱり学校の中の彼女とは結びつかない。


「兄貴、見る目ないな」

「なんだよそれ」

「だって、綺梨は大人しくなんてないし。普通見てればわかると思うけど」


学校の人間のほとんどが見ていて清楚で大人しいって認識なのだ。まほの方が変わった見方をしている。


そう思ったものの、ちょっとだけ気になってそれ以来観察するようになった。






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